リレー企画 はじめてのPDA

  えー遅くなりました。kzouさんから廻ってきたリレー企画、はじめてのPDA、ようやくアップします。

 わたしが初めて使ったPDAは、1992年に手に入れたHP95LXです。当時のわたしは、ダイナブックJ3100SX001というノートPCにアシストカルクという表計算プログラムをインストールしてあちこちを歩き回る営業マンでした。打ち合わせの最中にノートPCを取り出して自分が販売しているシステムの概算シミュレーションをお客さんに見せていたのです。様々な資料と一緒に持ち歩いていたので、カバンはいつもぱんぱんに膨れ上がっていました。あまりの重さに耐えかねてカバンのストラップが切れてしまうということもあったほどです。
 そんな中でIBM PCマガジンやThe Basicといった雑誌にHP95LXが「掌に乗る表計算」として紹介されていたのです。非常に小型なIBM PCアーキテクチャのマシンで、フルセットの123(という表計算ソフト)と優秀なPIMがバンドルされているというものでした。当時123はソフトウェアだけで10万円するものでしたので、貧乏な呑んだくれサラリーマンにはとても個人で買えるようなものではありませんでした。そんな123がわずか300gという小さな機械におさまって、しかもソフトウェア料金と同じ10万円で購入できるのです。胸が躍りました。
 苦労してお金を工面したわたしは、秋葉原を廻って手に入れることになりました。わたしが持っていたのはRAMが512kB(512MBにあらず)の初期モデルでした。その後ネットを通じてさまざまな95LXユーザと知り合うことができたのですが、ほとんどの方が1MBモデルをお持ちで、とてもうらやましく思ったことを覚えています。
 営業マンに表計算プログラムは必携のツールだという持論は、当時から十数年がたった今でも変わりません。役割が変わったので、その場でなんぼになりますなんて台詞をはくことはなくなりましたが、それでもいつも数字とにらめっこをしています。シミュレーションを思いついた時にできる環境があるということはとても重要なことだと思っています。
 さて、手に入れたHP95LXは取扱説明書からなにからすべて英語でしたので、情報を求めてネットを徘徊する日々が続きました。123が動くというだけで十分に堪能していたわたしですが、HP95LXが持つ奥深い機能に少しずつふれていくようになります。ネットにおいてHP95LXを日本語化するという活動にリアルタイムで関わることができたことは、自分にとってとても幸せなことだと思っています。日本語ドキュメントを表示することができるktypeというプログラムを使ったときの喜びは今でも忘れていません。わたしのあまりのはしゃぎように先輩から、うれしいのはわかるけどお客さんの前でもそんなことするなよと釘をさされたほどでした。
 その後、日本語表示環境や入力環境が整備されていきました。こんなふうにできたらいいなぁと思っていたことが、次々とできるようになっていくのです。感嘆の日々が続きました。95LXの表示能力に併せて8×8ドットのオリジナル日本語フォントを作ろうというプロジェクト(後の恵梨沙フォントプロジェクト)には、わずかながらもわたしも参加しました。嘘字の妙という言葉が当時使われましたが、本当にそう思えました。漢字を表現するには8×8のマスでは全く足りないわけですから、いかにうまくそれっぽく見えるかがデザインの肝になったのです。方眼紙に■を配置しながら長いこと頭を悩ましたものでした。
 こうして日本語環境を手に入れてからというもの、HP95LXのわたしにとっての役割が少しずつ変わってきました。表計算プレイヤーとしての位置づけは変わってはいないのですが、ほとんど使っていなかったHP95LXが持つPIMソフト群を多用するようになります。連絡先の一覧をみたり、今日のスケジュールを確認したり、こなさなきゃいけないことをまとめたりという、いわゆるPDAとしての機能がわたしを助けてくれるようになりました。
 さらにいえば、もっとも長い時間使ったアプリケーションはメモだったと思います。気軽に思いついたことを書き留め、文章として整理することができました。一度書き留めた文を見直してはあれこれ思いを馳せ、書き直すということができたのは、いつでも気楽に立ち上げることのできるHP95LXのおかげでした。最初はただ思ったことや、ネットの関わりの中のコメントを作っていたのですが、だんだん長い文を書けるようになってきました。そんな中でまとめていたのが学生時代の思い出だったりします。
 感情に流されやすく論理的な思考というのが苦手なわたしですが、PCやPDAはそれを助けてくれるものだと思っています。そのときそのときで何を使うかは変わってくるものと思いますが、「考える道具」としてずっと使い続けていきたいと思っています。

 わたしが遅らせてしまったので、盛り上がりに欠けてしまったと思っています。ごめんなさい。ということで次はモバチキさん(id:mobachiki)にお願いしたいと思います。