タキソテール

 朝日新聞より 一字違いの抗がん剤誤投与、1カ月後に患者死亡
 http://www.asahi.com/national/update/1021/031.html

 抗がん剤の「タキソール」と「タキソテール」を取り違えて投与してしまったために、患者が亡くなられたという哀しい事故が報道されています。
 人はミスを犯すものではありますが、間違いやすいこと、ミスをしやすいとおもわれることについては、それを避けられるような道筋をつけていく必要があります。報道にもありますが、「タキソール」ではなく「パクリタキセル」という用語を使うように徹底していればこのような事故は避けられたのだと思うと残念でなりません。

 専門用語というものはわかりにくく、混同しやすいものです。自分もこのような似たような名前の抗がん剤が複数あるということは知りませんでした。なぜ、この言葉に反応したかというと、「タキソテール」がかってのわたしと、亡くなった妻の希望の星であり、絶望の源であったからなのでした。
 「夢の新薬」と説明されたのがタキソテールで、妻の肝臓に広がった癌を抑えられるのはこの薬しかないだろうということで、治療が開始されたのでした。残念ながら妻の弱りきった体はこの薬を受け入れることができませんでした。
 よく効く薬は危険な薬であるという、ある種当たり前のことを、「唯一の希望」を打ち砕かれるという残酷な形で思い知らされることになりました。それでも自分はこの薬が誰かを救ってくれる希望をもたらすものなのだということを信じております。だからこそ、心を配って使っていただきたいと、願っています。